「フランス芸術に触発されて、横浜市にオペラハウスを作ろうと議会に提案した。まだ先だが、準備をしている」
林文子市長(74)は九日、日仏間の関係促進に尽力したとして仏政府から勲章を受けとった際のスピーチで、バレエやオペラの公演を主体とする新たな劇場整備への意欲を身ぶり手ぶりを交えて熱く語った。
ところが、報道陣から出馬への考えを問われると、「今は新型コロナウイルスの収束に向けて懸命に取り組んでいる。今後についてどうするか決めていません」と述べるにとどめた。
四年前の前回市長選で林氏を推薦し、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)誘致で歩調を合わせる自民党内では、林氏が四期目に意欲を示しているとの見方もある。だが、前回市長選で「白紙」としたIRについて民意を問う初めての機会となることや、新型コロナ対策などを巡り林氏のリーダーシップを疑問視する関係者もいて、四選出馬へのハードルは低くない。
多選も課題となる。自民党本部の規定で、政令市長選は四選以上で出馬する候補には推薦を出さず、県連か市連推薦にとどまる。
自民にとって、横浜は菅義偉首相のお膝元。ある市議は「絶対に負けられない」と強調する。立憲民主党などは「IR誘致反対」を旗印に統一候補の擁立を目指している。
しかし、自民内では林氏の動向を気にする声のほか、別の候補として現職国会議員の名前が挙がる程度。「立憲民主が誰を擁立するのか。それが一番の鍵だ」「相手を見てから候補を決めればいい」。焦りの声はない。
IRについて逆風と明言する声もない。支援する候補者が触れざるを得ないとしても、「市政の課題はIRだけではない」と、数ある争点の一つとすれば乗り切れるとみている。
ただ、後ろ盾となる菅政権は新型コロナ対策への不満などから発足当初より支持率を下げており、二十五日の国政三選挙で全敗した。党関係者は「党内でばらばらになることは避けなければならない」と懸念を募らせる。
また、自民と同じく前回市長選で林氏を推薦した公明党県本部の幹部は「独自候補は出さない」と明言し、「候補者が出てから、横浜市のためになる候補者かどうかを検討して支援するか決める」との立場を示している。 (丸山耀平)